2008年3月30日日曜日

健康づくり推進協議会ー2

 先日お昼休みの時間を利用して、村の健康づくり推進協議会に参加してきました。これは以前にもブログで紹介したものですが、平成19年度の保健活動のまとめと来年度の展望を保健師さんたちが村の各団体代表に説明し質疑応答をして了承を得るものです。健康日本21の中間報告は、やはり、少なくともこの村では惨敗だったようです。ほとんどすべての項目で4年前より悪化しているのでした。説明を聞いているフロアから目立った質問もなく、来年度以降の対策に説明は進行。自殺予防の話では20分くらいかけて参加者からの意見を募り、来年度からの対策に生かしたいとのこと。この時点は僕は午後の診察のため退出。
 厚労省では健康日本21にメタボ健診をとりいれて巻き返しをねらっているようなのです。またしても健康産業の活性化は見込まれるものの、循環器系疾患による死亡率低下に寄与できるのかは不明。責任を(国保では)各自治体にもたせ、ペナルティーまで科していますが、こういったやりかたで各自が生活を変え健康になれる思うその思考回路がわからない。自分の生活のほんの一部を変えるのだって相当大変なことなのにね。たばこ1箱を千円にするほうが、よっぽど実効性がありそうです。会議に参加した皆も多分、国のやり方に半ばあきれてたのではないかなあ。

2008年3月26日水曜日

愛していると言ってくれ

 外来で伺ういろいろな話、病にまつわる物語。ほんのわずかな時間の中ではあるのですが、追体験或いは追想していると、なんだか大抵せつなくなってきます。ときには嵐の後の青空のような物語にこちらが力を与えられる場合もありますけれど。僕が発するほんのささやかな一言でさえ、抱きしめるようにして帰って行く人がいて、それをみた僕自身が抱きしめられているような感覚があって、多分僕と彼の明日は少しかわるでしょう。
 医療のコア或いは基本動機は、このような双方向の共感にあると信じています。それは科学者としてあることを求められるうちに忘れられてしまった、本当はもっとも大切は感情なのだと思います。関係性の上に展開される家庭医療が、共感を重要視するのは当然のことでした。

2008年3月20日木曜日

総合医・家庭医とデパートの話

 前回のワークショップに関連した話。田舎の地域医療と村作りの話なので、最初はデパートと総合病院の話は抜きにしようと思っていました。”総合病院が欲しい。デパートが欲しい。以上。”となるのを恐れていたのでした。でも考えてみれば、欲しいのは総合病院やデパートという建物そのものではなくて、各専門家の診察や欲しい品物だろうと思います。さて、ここからは想像の世界。インターネットを利用した大きな画像が目の前にあり、専門家が現れ、総合医・家庭医と患者さんがこちら側にいるとします。患者さんの本当の不安や心配を医療という言葉に翻訳して専門家に伝える総合医・家庭医が当の患者さんとともにいて、一方専門家からは彼が医学的な判断に必要な診察や処置の指示で行うのです。患者さんが納得いけば、総合医・家庭医がひきつづき診療し、場合によっては後方病院に連絡することになるでしょうが、ただの紹介とは違う満足感がえられるように思います。わざわざデパートにいかなくても、最高に見立ての良い信頼できる知り合いから紹介された商品を買うほうが良い場合が多々ありますよね。インターネット環境の整備はできそうですし、専門家も定年退職された教授先生で地域医療に理解のある方にリーゾナブルな報酬でお願いできるかも・・・するとあとはレベルの高い信頼のおける総合医・家庭医がいれば良いことになります。みんな頑張ろうね。

地域医療は地域作りと関連するー明日の尾駮診療所

 昨日、『明日の尾駮診療所』というタイトルのワークショップを行いました。六ヶ所村の医師確保問題がその動機付けになってはいるのですが、それも含めて目まぐるしく変わる社会に適応する必要があったからなのでした。いわゆるメタボ健診は、惨敗に終わった(と思う)健康日本21の後継者なので、ペナルティを科してまで保健指導を徹底させますが、現在の村では独自に十分な対応はできません。国保以外の方はすべて村外の施設にお願いすることになるでしょう。福祉・介護の面でもうまく機能できていないのです。村独自ですべてやる必要はないとはいえ、上手に運用すれば経済的にも成り立つような新しい形ができると思うのですが。えーい、こうなればワークショップだ!
 ワークショップは地域ケア会議のメンバーを主体にした小さなものでしたが、医療や保健や福祉にし限定しない生活の面も含めた”明日の六ヶ所村”を語り合いました。シビアな問題から、小学生の夢のような未来まで、平均年齢推定45歳のメンバーがおよそ2時間。ほのぼのと真剣に話す姿をみていて思いました。地域の将来に関与していることの面白さと地域生活からボトムアップする医療のあり方を僕らは正当にも地域アプローチとよぶべきだと。
 8月9日(土)と10日(日)に少し大きなワークショップを開催します。村民、医学生、研修医、議員さんなどを呼んでワイワイやりたいと思います。仮題はもちろん『明日の尾駮診療所』。どんなもんでしょ?

2008年3月14日金曜日

医師会の認知症講座ー豪腕炸裂の春

 先日、医師会主催の認知症対応講座に参加しました。日曜日の午前9時半から午後4時ころまでのなかなかハードな講習会でした。医師会の集まりではいつも感心するのだけれど、かなり高齢な先生たちがほとんど居眠りもせずにまじめに聴講している姿は、いろいろ言われいるものの、医師という職業の倫理性や勤勉さや誠実さを十分に感じるものです。見習わなきゃ。
 内容は認知症の基礎と診断・治療の基本をおさえ、さらに地域連携まで入ったスタンダードなものです。眼科の先生もいらっしゃる中で、この基本的なスタンダードさは大切だと思います。終了後は知事名で認定書が郵送されるのだそうです。ただ、これを有効に臨床にいかせるかどうかは別かもしれません。たとえば野球のルールを教わっても、すぐにできるなんとことはありません。また本人が野球が好きでなかったらやっばり野球なんてやらないでしょう。
 僕は青森地域医療研究会(COMER-net Aomori:リンクをご参照ください)というのを主催しているのですが、実は6年くらい前に認知症に関する研究会を始めていました。仲間で勉強会を行い、問題点を拾い上げ、広域の担当者研修会のようなものを立ち上げていたのですが、なかなか活動の維持や発展は難しかったのでした。ましてや近隣のお医者さんたちが一斉に学習を始めるなどという事態は想像もできませんでした。国ー県の流れで、認定書を発行することの威力を目の当たりにしたような気がしました。おそるべし、権力機構。豪腕炸裂だなあ。一方、僕は僕で久々に春めいた日和もあって、これらのことが遠い出来事のような感じもするのだけれど、”それでも個人の力をこそ信じるのだ”とつぶやきながら、遅い帰路についたのでした。

2008年3月5日水曜日

ただいま引っ越し中に見つけたもの

診療所の所長室を引っ越しています。同じ階の2つとなりの部屋なのですが、この18年間にたまった書類やら本やら、あるいは何かの記念品やらの多いこと・・・それより驚くべきは、そのほとんどがただそこに置いてあるだけで、ほぼ全く使われていなかったことでした。本なども確かに読んで赤線を引いた形跡はあるのですが、その記憶がない。昔の記念写真の僕は確かに相当若くて髪の毛も真っ黒ですが、ウーム、考えていることはあんまり変わってないや。
 内容は無限にあるのだけれど、それらはすぐに役立たなくなったり忘れてしまったりだから、本当に重要なのはその形式あるいはスタイルなのだと思います。ところで、これを医療に敷衍すると、専門医と総合医・家庭医の話にもなるのだけれど、皆な気づいているのかな。意味を決定づけるのは、内容ではなくて、その形式/スタイルなのだということを。ある形式/スタイルを受け入れるということは、その形式/スタイルとそれが指し示す価値観も共有することにもなりますね。
 現実逃避はいけない。引っ越しをすすめなきゃ。
 

2008年3月2日日曜日

多量飲酒への外来介入研究

先日、神奈川県にある久里浜アルコール症センターに行ってきました。アルコール依存症というレベルではないけれど、多量飲酒者(おおむね毎日3合以上のむ人たち)を対象にした節酒介入をプライマリレベルで行うためのbrief intervention(BI:短時間の介入方法)の研究会でした。医師よりも保健師さんが多かったようです。先進国で行われてないのは日本だけとか(またか!)。このBIによる節酒効果は世界的に確かめられているらしいのですが、日本でもその実証が必要というわけで、たまたま人づてに僕にもご指名があったのでした。一日目の夜に、これもたまたま知人の送別会に横須賀で遭遇して、いつにない多量飲酒で(僕は下戸なのですが)2日目が二日酔い気味だったのは、自分でもあきれましたが。
BI自体はよく考えられたものです。認知行動療法を基本にした、ワークブックと飲酒日誌の組み合わせを使った介入です。1年間でトータル5回の面接があり1回目と2回目は約15分かかりますが、その他は5分程度で終わるように設定されています。介入レベルは3群にわかれており、コントロール群(資料だけわたす)、B群(ワークブックを使用して介入)、D群(さらに飲酒日誌も使用して介入)の節酒効果を比べるのだそうです。症例を集めるのが大変でさらに外来の診療に組み込むというところに、保健師さんと違った難しさがあります。外来大丈夫かなあ?
でも、引き受けました。BIの手法に、慢性疾患に対する面接技法のヒントがありそうですし、応用すれば各疾患別のワークブックが作れそうな感じがしたからです。後輩たちよ、ちょっと無理してでも研究してみようよ。自分を高めるには、それなりの負担は避けられないのだから。・・・事後承諾ですまんのだけど。