2009年3月31日火曜日

relationship's equation

 地域医療についてH大学の学生さんたちに説明する時に用いる等式がある。前回のGDTに続いて必ずや(或いはたまには)物議を引き起こすであろうことを書いてみます。考えてみれば臆面もなく授業で使ったりしているし、考えるまでもなく試験にも出したりしているくらいなので、どうどうと書かないと、むしろ学生さんたちに合わす顔がないってもんです。授業で使っているものを少し改変して、もっともらしい形で次のように表します。
community practice
   = ∫ disease × illness × person × context / I(doctor)dp/dt ・・・(1)
  community practiceは地域で行う医療というほどの意味、またdiseaseは疾病を、illnessは病い体験を表します。personはその人の性格も含めた人間特性で時間によって変動するもの、またcontextはその人と繋がりのある人や組織で家庭や会社或いは地域社会との関連項です。分母のIは医師としての自分のこと。ある時点の診療をpとしてその時間の積分がcommunity practiceになるという感じ(表現の仕方が厳密にはまるで間違っているかもしれないです)。さらに略号を用いて見やすくすると、
 CP=∫ D・ Il・ P ・C / I dp/dt ・・・(2)
 この(2)式の右辺をよく見ると、分子が全て分母Iに関係している状態というのがわかります。疾病と医師との関係(知らないものはなにもできない)、病と医師の関係(共感できないものは理解できない)、性格特性と医師の関係(うまが合うとか合わないとか)、取り巻く人や地域との関係(その家族を知っていると行動がかわる)。だから関係性の等式と名付けてみました(relationship's equation)。そして時間の経過で全く異なる医療ができてゆくということ。これは複数の医師がいれば複数の地域の医療が同時に存在するということであり、実はとてもrealなものだとも思います。ややこしや〜、いや、これも当たり前のこと。

2009年3月18日水曜日

general diagnostic theory

 またまた変な造語を英語に置き換えて煙に巻いている訳ではないのですが、こんな言葉になるのかなあ。研修医の先生方とのやりとりの中で結晶化した汎用診断理論(或いは屁理屈)。あえて英語にする理由もないのですが、以前お話していたheart station projectの1つに英国一般医・家庭医との連携を考えているものですから、そのためのほんのささやかな英語練習の一環で、われながら大海に一滴という感じで、ちょっと泣けてきますね。
 さてそのGDT(笑)のこと。結論から言うとあんまりシンプルで当たり前のような気がして、ブログにのせるのもどうかなあとは思いましたが、なんだか、結構研修医の人たちの反応が良いので、書いてみます。診断=障害部位(解剖)×時間経過(病理)この際、障害部位(解剖)は症状をキャラクター分析することで推測し、さらに時間経過を特徴的な病理変化と対応させることで診断名に至るというものです。この方法でゆくと、部位や系統は全く関係なく考察できるようになって便利です。皮膚でも骨格でも、心臓でも肺でも、神経でも精神でも、同じ思考過程になって行きます。当たり前って言えば、当たり前なのだけれど、実際のケースで1つ1つ検討してゆくとその面白さがわかってくるように思います。おお、これこそGPのための診断学だあ!と叫んだのは夢の中でしたけどね。ああ、周りに人がいなくてよかった〜

2009年3月11日水曜日

the left hand, just set softly

 変なタイトルでしょ。今週はB大医学部の卒業生が地域研修に来ています。彼がバスケット部に所属していたというところから話は始まったのですが、ここでもうタイトルの意味が分かった貴方はきっと”スラムダンク”のマニアだと思う。そう安西先生に指導を受け、山王との戦いのクライマックスに花道がつぶやくその台詞!”左手は添えるだけ。”を勝手に英訳してみたものです。知らない方、すみません。
 夕方の検討会でPCM(patient-centered clinical method)を例のようにF先生オリジナルの4分割マトリックスで説明していた時のこと、たまに感じるちょっとした違和感ー簡単に理解できている、あんまり簡単に理解できることに軽い苛立ちを覚えていたのでした。”左手は添えるだけだよ、花道君”と言われて、それは誰でも理解できる簡単なことなのだけれど、流川(主人公・桜木花道のライバル)に花道へのパスを決断させるくらいの信頼を得るために、花道には何万回のシュート練習が必要であったことか。理解できることと自分がプレーヤーとしてなにごとかを成すことは全く別ものであって、playerになるためにはplayするしかない。playerとはplayする人のことだと、tautologyもなんのその、相変わらず脱線続きの夕方検討会でした。
 ”おれはGPですから。”という台詞に反応できるあなたは、きっと”スラムダンク”と地域医療のマニアだと思う。(ちなみにGPはgeneral physicianの略)

2009年3月6日金曜日

confusion, jazz, and primary care

 大変な事態で混乱しています。どうも春から常勤医が一人減ってしまう公算が高くなってしまいました。3人でやりくりしている地域の医療がただ1名の減員で大きく変わってしまうことは予想していたものの、いざ現実化するとなると不思議な感覚になります。悪夢が現実化したような、あれれ、これは夢で見たあれだ!ついに夢に追いつかれてしまったのか!という風に。
 しかし一方で、この混乱を比較的冷静に見ている自分がいることもまた事実で、深呼吸をしてぼうっと空を見上げた時のjazzyな感覚も同時に自覚できるようです。敢えて(やせ我慢ということですね)言えば、これがprimary careの性質であって、混乱と不安定性こそが地域医療の本性であるとも思います。ですから、primary care研修にはもってこいの環境が、敢えて言えば(超やせ我慢ということですが)整うことになりました。来たれ若人。confusion, jazz, and primary careという妙なキャッチフレーズを考えつく僕は、ちょっと、どうかしているでしょうか。大丈夫かなあ。俺。
 追伸:家庭医療・地域医療を目指す医師たちに告ぐ。ハヤクキテクレ。