2009年9月5日土曜日

my sweet lover

親愛なる人。僕がもしも、いわゆる若年型アルツハイマー病だったとしたら、君はどうするだろうか。君はもともと体が弱くて、どちらかと言えば僕が支えてきたのだけれど、そのような僕ではなくなってしまうのかもしれない。自分が壊れてゆきつつあることを自覚するのは、想像以上の不安と恐怖だ。愛する人よ、僕はこわれつつあるのだ。輝くようなあの思い出をたぐり寄せれば、あのときのような僕ではあるのだけれど、口笛を吹けば、あの時の口笛と呼応するのだけれど。まるで時を超えたやまびこのようだ、そう、過去に閉じるようなこの感覚が不思議で、とても愛おしい。目の前の事象は、あまりにせわしなく、僕を息苦しくさせる。親愛なる人よ。僕のそばにいてください。手を握っていてください。(あるご夫婦の逸話から)
 僕はこの村の医師としてなにができるのだろうか。僕ら夫婦にとっても、まるで他人事ではないのだけれど。

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