2008年9月2日火曜日

ボトムアップの地域医療:その名はBSAP(ビーサップ)

 先日認知症の研修会に参加しました。認知症の方々が地域で長く暮らせるために乗り越えるべき障壁の1つは、データからも経験からも周辺症状と言われる状態です。例えば幻覚や妄想でご主人をせめる。自分の生家に帰ることを繰り返し訴え、外に出て行ってしまう。例えば二度と帰らない、失われた大切な人と幻覚で会話する(・・涙)。
 激烈な症状に対して一般病院でも介護施設でもお手上げのことが多く、そのほとんどは精神科のお世話になっています。精神病棟も余裕があるわけでもなく大抵は強い精神安定剤を使用するのですが、微調整も外来では難しく、結構寝たきりになったりします。認知症の人は増える一方なのに、政府と国の医療対策ときたら、いつまでもトップダウンの紋切り型で、教科書的な知識を講習すればなんとかなると思っているのです、きっと。 
 この研修会は、方向が逆、ボトムアップです。周辺症状への対応を薬剤コントロールのレベルから底上げし、全体の介入を地域の医師と関連スタッフというチームで行うというものです。ここには行政の上から下という流れはありません。個人・ご家族の苦しみへの共感から始まり、医療技術を高いレベルで使用し、その地域のチームで支えてゆく。やがては地域そのものを動かすことになるだろうこの取り組みは、10年前僕らが青森地域医療研究会の設立目的で述べた方法そのものです。その名は、BSAP-BPSD(周辺症状のこと)Support Area Project-。頑張れビーサップ!

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