2010年7月9日金曜日

to know why not to know

 先日調子にのって汎用診断論なんというものだから、そのすぐ翌日に、診断できないで3次病院にお願いした方がおりました。うーん、天にみられているような感じではありますが、この際、なぜ診断ができなかったのかを考察してみます。
 まず、汎用診断論では障害部位(解剖)×タイムコース(病理)で仮の診断名を決めます。その病因に関しては発生状況から予想することになります。また、その時点のバイタルサインにはリアルタイムな病態生理が反映されていると考えます。ですから、現実の対応としては、病態生理に即時対応しつつ(循環、呼吸、意識が中心)、診断を同時に或いはそれに引き続いて行うということになるのでした。例えば次のような形になります。
1)病態;呼吸不全  
2)診断;肺炎:肺の広範な浸潤影(解剖)×上気道症状から1週間での増悪(タイムコース)
3)病因;肺炎球菌?:市中での発症、高齢者 糖尿病
 以上から、診断ができないときは、当然ながら、障害部位の特定ができないか或いはタイムコースの把握ができないとき、ということになります(病態があまりに逼迫していれば診断まで辿り着けず、高次医療機関に搬送ということもあります)。今回診断がつかなかった方の場合、障害部位はおそらく消化管×急性発症で持続性かつ波状の変動があることから急激な血流障害?ということで、解剖・病理(特に病理)いずれの要素も不確実性が高い状態でした。また病態としてはバイタルサインは比較的安定していましたが、痛みはおそらく経験したことのないようなレベルのつらさであることから逼迫した痛みの発生が疑われました。まとめると、①診断は解剖<病理の両方で不確実であり危機的なものを否定できない、②病態(痛み)は逼迫しておりさらに診断する時間の余裕がなかった、ということです。診療所でのこれ以上の診療は危険と判断し搬送いただきました。無事な帰還を祈ります。
 

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