自治医大を卒業してからもう何年になるだろうか。送別会に集まった面々は確かに平均45歳程度の年の取り方をしているのだけれど、お互いの入学時期が近いものだから、なんだか学生寮に戻った気分だ。主役であるはずの送られる人のことが話題の中心にならないというのは、健全なのだか、失礼なのだかわからないけれど、言いたいことを言える仲というのは、この年齢になれば稀少なのであって、そこにいるだけで結構楽しい。
その中にあってK先生の話は圧巻だった。孤軍奮闘の末に大きく花を開いたERセンターのことを熱心に情熱的に語っているその姿は、僕が研修医になりたての頃と大きく変わっていない。20年以上前のことを思い出す。いつもなにかと戦っているような生き方、敢えてぶつかってゆくようなそれを、うんと若いころの僕は、ちょっと変わった先輩というくらいの見方で接していたのだったけれど。しかし今回、K先生の話方の中に、必ず自治医大という言葉が出てくることに気づいて、ようやく理解したような気がした。彼は自治医大を本当に愛しているのだ、その看板を誰に言われるのでもなく背負い続けているのだ、ということ。
実のところ、診療所という立ち位置で20年にわたり地域医療を語ることで、僕は自治医大のあり方をもっともよく体現していると、不遜にも感じてきたのだったけれど、それは屈折しており、どこかすねた子供のような気分をともなっていた。K先生の場合には、かけねなし、条件もない、母校に対するひたすらの愛情のようなのだ。自分を愛してくれ、ということもない忠誠に近い愛情なのだ。その戦士のようなprideに僕は圧倒されていた。・・・やっぱり先輩はすごいや。
0 件のコメント:
コメントを投稿