2008年12月18日木曜日

自治医科大学の冒険その4(一応最終回・・ ふ〜)

 目覚めた人たちの顛末を、まだ20歳代の僕は複雑な思いでみていました。彼らが去った後の医療センターはなにごともなかったように運営され、義務年限を終了した卒業生たちが田舎で習得できなかった各科専門技術の修練に集まってもいました。自治医科大学の本営は、自分たちの慣れ親しんだ従来の価値観に照らし合わせて、多分それをよしとしたのでしたが、画期的な事業の立ち上げの機会を永久に失ったように思います。大学での一般的な医学学習・卒業生との交流→地元での臨床研修→へき地診療の実践→大学・センターでの各科研修バックアップ→専門家としてのキャリア。ついに円環構造は完成しました。大学人の価値観は守られ、総合医という言葉はへき地で必要な各科技術の習得と実践という同じ地平に置かれることになりました。彼ら目覚めた人たちは、その地平から空に向かって立ち上がった人たちだったのでしたが。彼らはなおも総合医療や家庭医療の尖端で、その価値観を示し続けています。まるで伝説の巨人のように。
 ところで、このへき地医療を担う総合医養成の円環構造は実にシンプルです。教える側は変わる必要がないのですから、自治医大でなくとも地元の大学で行う方が効率的でさえあります。各大学で地域枠の医師が多数輩出するだろう現在、自治医大が恐れるのは当然でしょう。内容は真似易し。姿は真似難し。このことの重要性を引き受ける覚悟があるかどうかが自治医科大学のこれからを占う試金石だと個人的に思っています。さて、これから、どのような冒険が待っているでしょう。第二幕はすでに上がっていますね。

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