地域医療の方法
日常診療の中に見え隠れする地域医療の形或いは文法をremark。 言葉が僕を去らないように、願わくばいつか誰かの夢に現れるように。
2010年9月27日月曜日
tears in the heaven
村のほぼ中央、ただし部落と部落の間にある人家の少ない場所で、すこし山側に入ったところに授産施設と言われる発達障害の方たちの施設がある。義務教育後の10代後半から60歳代まで人たち50人くらいがそこで生活している。月に一度診察に行く。ほとんど施設のスタッフと変わらない雰囲気で働いている人から全く言葉を解さない人までかなり認知機能には差がある。自閉症やてんかんの合併症も多く、時には思いがけない行動をすることもある。
言葉をほとんど理解できず話せもしないはずの重度の発達障害の方がたまに発する言葉が、”ぽっぽっぽ”ともう一つ演歌のワンフレーズだった。50歳代のその方の母はもう亡くなっているのだというが、その母が彼に歌い語りかけただろう言葉だけが、意味を理解されないままのその人の記憶に残り、時に再生される。彼は母を思うのだろうか。母はなにを思っていただろうか。知らぬ間に、その人を自分の息子に置き換え、その母を自分の妻に置き換えてみている。彼は口元に締まりがなく、いつも涎が滴っている。僕は彼にほほえみかけている。
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