2010年8月27日金曜日

story telling: live and let live

 1ヶ月或いは3ヶ月という長い期間を地域研修に費やして帰って行く研修医の人たちを見送るのはいろいろな意味で感慨深い。その会話の断片を思い出す、多少の痛みも伴って。
 彼らが傷ついたり悩んだりするそのたびに、何か言葉をさがしてきて語るのは、やはり自分のこと以外ではないのだけれど。自分の経験を再構成して語る物語から、なんとか力のある言葉を取り出そうとする作業は思いの外難しい。まず彼らの今の文脈とそのテーマに合わせて自分の経験を再構成する。もとより客観的な経験というものが存在しない以上、それを実際の経験とするのは無理があるのだけれど、物語として語ることで、とくに力のある言葉を発見できれば、聞くものに勇気をあたえることができるだろう。未来に踏むこむ力になるだろう。それ以外に自分の経験を後輩に話す理由など本来はない、と感じる。しかしながら再構成した自分の経験を語ることで、自分もまた救われるという鏡合わせのような構図もあり、どちらがより多くを得ているかというと、おそらく自分の方なのだ。このことに自覚的であろうと思う。ひとりよがりは僕の悪い癖だ。言葉が相手をさらに傷つけることも多く経験したのであるし。
 T先生、M先生、またいつか会いましょう。

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