2009年4月25日土曜日

return of the network divers

 地域医療の研修に3ヶ月も来てくれていたK君と医師になりたてのTさんとのディスカッションからー研修全体を通したレビューの中で、どうも尾駮診療所では地域医療と言いながら、いわゆる保健活動や地域活動がないのではないかという従来からの批判があるし、実際K君もそのような活動が少なかったと思っているよね。研修期間中に話してきたのは、PCM(patient-centered method)の意味とそれに連動する地域アプローチのことだったのだけれど、今日は良い機会だからPCM×地域アプローチから見える地域活動の真意と来るべき未来の医師について話しておこう。
 地域活動のある表現が、保健活動の立案や地域ケア会議の主催や或いは地域興しだとするのは間違っていない。けれども、これらがないからといって、医師が地域活動と全く没交渉ということにはならないんだ。順番に話していこう。まず地域の活動とは、そこに関与する人たちがある目的を持って動くということだね。そして人が動くのは実は心が動くということ(目をつぶってみればすぐ分かることだけれど)。さらに心を動かすのは自分以外の誰かの心との共鳴だというのは自明ではないか?そしてこのような共鳴する心の繋がりはその関係する人の数だけ増えていって、ちょうどネットワーク状のシートを形成することになるのだよ。これに医師自身が含まれていると自覚するとなにが起こると思う?地域が自分を含めた人と人とのネットワークで形成されており、医師としての自分の動きや対応で、それが揺らぎ、或いは反動がもたらされ、形状を変えて行くのが想像されるでしょ。例えば介護職の方を一方的に非難したとたん、その人から波及した感情がネットワークを揺らして、場合によっては福祉の連携がぎこちないものになることだってあるんだ。
 さて、K君。この3ヶ月できみが関与した地域でのネットワークを考えてみて下さい。キミの言葉で形状を変える目にはみえないネットワークが確実にあることに気づくでしょう。それが僕の思う地域活動の真意だし、そのネットワークを意識して、それに飛び込み関与しつつ医療活動ができる医師が未来形だと思っているんだよ。network diverって名付けているんだ。僕?いや、まだまだビギナーだよ。まだ未来は僕には訪れていないよ。

2009年4月14日火曜日

dance, dance, dance

 患者中心の医療の方法(PCM;patient-centered  method)を説明するのによく使うメタファーがある。今週来てくれたK病院の研修医のAさんにも用いたそれをdanceの暗喩と個人的に呼んでいます。ある時は野球に例えたり、またある時はジャズ演奏に例えたりと、話す人の興味に関連して変えていましたが、このdanceというのが最もわかりやすいのではないかと思っておるわけです、おっほん。誰?・・・
 もっぱら社交ダンスを想像してみたまえ。ダンスを知らないご婦人と手を取り合って彼女とともに形成するであろう演舞の困難さもまた。合一するベクトルをいかに優雅なものにできるかは、畢竟コミュニケーションにその鍵があるものと思い給え。相手をただ押してはならない。壁にぶつけて傷つけるのが落ちだ。だた押されてもならない。永劫の退却があるだけだ。我々は円を描いて回る必要があるのだ。そしてその力強い演舞を保証するのが足腰の強さであるように、疾患ベースの知識や技術が高度でなくてはならないことも忘れてはならない。
 それでね、Aさん、その足腰を鍛えるのが毎日3〜4時間に及ぶこの検討会というわけなのさ。だから、もうちょっとつきあってね。danceでgo!ってゆうでしょ?言わないか。

2009年4月7日火曜日

a dragonfly in the sky

 一般的な大学の講義ではね、いまにして思えば、標本箱の中にあるトンボの勉強をしていたような気がするんだ。大きさや関節の構造、色彩や柄、羽と体部の比率、眼球の構造などを(多分)勉強したことになるのだけれど、飛んでいるトンボにはどうしても到達できないよね。そもそも天空を滑走するあの自由なトンボをそのものとして観察する方法さえ、僕らは獲得しているとも思えないしね。その流儀で行くと、総合病院や大学病院ではトンボの方から飛び込んで来るのを待っていれば良いのだけれど、地域というフィールドでは全然そんなことはなくて、近づけないことさえあるくらいだよ。さらに調子に乗って言えば、トンボが生きるための生態系だって、僕らGPにはとても重要な関心事だってことになる。あの池を美しくありつづけるための方策、或いは害をなす虫たちが発生しないようにすることだって無関係ではいられないのだ。同時に自分がその自然体系の一部であるということも避けられないでしょ。GP面白いよね!(H大学の学生さんとのお話で使ったトンボの標本の話から)